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はじめに 
2006.05.21.Sun  
当blogについて

管理人が非常に敬愛する森瑤子さんの著書についての感想、粗筋などをつらつらと書いていきます。
感想については非常に個人の嗜好に偏りますので、ここに記された管理人の感想が100パーセントでないことはご承知置きください。


管理人の基本のスタンス

・リンクフリー、アンリンクフリー
・こちらからのリンクに不都合がある場合はご連絡ください
・コメント、トラバもご自由にどうぞ
・スパムコメント、スパムトラバは削除します
※悪質な場合はIP晒して禁止設定し、プロバイダ通告します





森 瑤子

1940/11/4〜1993/7/6
本名 雅代・ブラッキン。旧姓伊藤雅代。
静岡県伊東市生まれ。東京藝術大学ヴァイオンリン専攻。

24歳 アイヴァン・ブラッキン氏と結婚
26歳 長女ヘザー誕生
28歳 次女マリア誕生
30歳 三女ナオミ・ジェーン誕生

35歳 「情事」がすばる文学賞受賞

52歳 胃癌の為逝去

情事 
2006.12.18.Mon  
情事 (1978年) 情事 (1978年)
森 瑤子 (1978/12)
集英社
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やはり最初はこれで。
デビュー作にて第2回すばる文学賞受賞作品。→すばる文学カフェ



「夏が、終わろうとしていた」

それから始まる、人生の夏を終えようとしている女の短い「情事」の作品。
全書を読むと顕著にわかるのだが、非常に句読点の多い文章であるのは彼女のデビュー当時の特徴でもあった。翻訳文のようだ、との評をどこかで読んだことがある。

主人公のヨーコの夫や恋人が日本人ではないことから、感情移入は難しいかもしれないが、それは単にシチュエイションの違いだけであってヨーコの抱く感情の揺らぎや飢えは万国共通と感じる。
例えばラムを焼いて持って行くことが、他の女にとってはこそりと夜抜け出すことや小さな旅行に代わることはあれど、女が抱く感情に違いはないのかもしれない。
恋人との時間のために小さな嘘を吐き、そしてその嘘をまた嘘で固め、いざとなったときに薄く強靭な鎧を身にまとい、きっと自らを傷つけることで恋人への嘘の償いとすることを選択するその潔さは大人の女ならではだと思う。

タイトルどおり、確かに「情事」の話ではあるが、その奥底に潜む女ざかりを手繰ろうとする淋しさと、哀しさを読み取りたいと思う。


少し話が逸れるが、追って執筆されたエッセイにて、浮気相手と駆け落ちした妻がこの作品を残していたという夫の手紙を読む話がある。
そこでその夫君は「妻が本当に読み込んでいたらあのような行動には出なかっただろう」と書き記している。そして彼が、森瑤子の積極的なファンになった、とも。
決して浮気をすること、「情事」を持つことを扇動した作品ではないことを断りにしたい。
▽あらすじ
熱情 
2006.12.26.Tue  
熱情 熱情
森 瑶子、ケビン リーガー 他 (1989/09)
角川書店
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非常に読みやすいミステリー。
恋愛小説家としてデビューした彼女の、ケビン・リーガー氏との共作である。
海外作品を多く読んだ彼女らしく、最初に登場人物紹介のページがある。

テンポがよく読みやすい。謎解きよりも主人公の女性の心の揺れ方が気になる。
彼女の作品にしては珍しく母娘の関係は良好で、母(主人公)も娘も闇を抱いてはいない。
DD(娘)は非常に抑制されたトリックスターのような位置づけで、母であり主人公である志織を食わずに上手に謎解きの片方の紐を持っている。

私はミステリーを謎解きを主体に読まないので、この作品で使われているトリック、伏線が優れているかどうかはわからない。
けれど、小説として読んだときにそのトリック、伏線が気にならずに読み進められるという点では文芸作品として良く出来ていると思う。
読み返すと、ところどころでいつもの彼女らしくないと感じるところもあったけれど、この作品が共作であるというところで納得がいく。


彼女はのご主人はヨットが好きだったと聞いている。
そのヨットを題材にした、オーストラリアでのアメリカズ・カップ。
きっと彼女もそれを見たのだろう。青い空と、そこに吹く風と。
そしてエメラルドグリーンの海を駆けるヨットと。
彼女が愛した町、京都も舞台として扱われているのが、本当に彼女らしいミステリーとなったと思う。



さて、少女のトリックスターがお好きな人には「砂の家」がオススメ。
こちらは長編だけれども、大人になりきれない少女がくるりくるりと回転している。
そしてミステリーがお好きな方へは「消えたミステリー」。
女流小説家の家で起こったある殺人事件が題材だ。
こちらも非常に読みやすく、テンポよくエンドまで連れて行ってもらえる。

▽あらすじ
夜の長い叫び(上)(下) 
2007.01.14.Sun  
夜の長い叫び〈上〉 夜の長い叫び〈上〉
森 瑶子 (1992/08)
集英社
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夜の長い叫び〈下〉 夜の長い叫び〈下〉
森 瑶子 (1992/08)
集英社
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文庫だと上下巻となるこの作品は、ある夫婦の関係とひとつの事件とが二つの柱となって成り立っている。
夫婦関係を描くことは非常に森さんの得意とするところだが、それだけに留まらないドラマティックな設定は人間関係が複雑に偶然に絡み合うところから生まれ、そしてその関連を結びつけるラインは滑らかだ。
そこはいつも感嘆するところなのだが、游子と夏陽子の出会い辺りが多少気になったところでもある。

津本夫妻の関係の裏側には、今江恭作・夏陽子夫妻(本来は今江夫妻、と書くべきなのだけどもこの方がしっくり来る)の違った夫婦関係があり、夏陽子と小杉良の柔らかい関係があり、と色々な見方が出来る。
ちなみに私は游子の京都の友人、多津子が非常に印象的だった。
望まなくても望んだ道を、幾度も飛び出したくて飛び出せないジレンマと闘ったであろう彼女の選んだ人生を垣間見るだけなのだけれども。


上巻は主に物語導入部は夫婦の関係がガタガタと崩れいく様を描きつつ、事件は穏やかな終息に向かっていく。
下巻は上巻の進行を踏まえた上での「転」部分だ。
崩れていく夫婦関係、女の仕事、事件の綻びと性愛と、そして声にならない悲鳴。
上巻読了後に想像出来ない展開になっていく。新たなきっかけと、それから必要なことを見出していく様が描かれる。

それぞれの岐路で選ぶ道のどれが正しいとはわからない。
正直、私には最後の游子の選択を正しかったものと思えない。
けれどその選択はきっと何かがあるのだと思う。それがまだ私には理解できていないのだろう。
どちらかを選ぶということはどちらかを失うということだ、というのを彼女は痛感するのだけれど、それ以上のリターンを彼女は得たのだと、信じたい。



ちなみに森さんの作品はところどころがリンクしているようにみえるのが好きだ。
今回、女流作家設定で登場する夏陽子。森さんの作品に「ようこ」という名の女性は数多く登場するが、恐らくは森さんの分身に近いひとなのだろう。
今回の作家夏陽子はアメリカズ・カップを題材にしたミステリーを書いている設定になっている。これは先に書いた「熱情」のことを象徴している。
全作品を通して読むと、そんなところにも気付くのが楽しい。
ちなみに游子はやり手のPR担当者となっているが、森さんの妹さんがたしかPRの道に進んでいたはずだ。
▽あらすじ
TOKYO愛情物語 
2007.01.22.Mon  
TOKYO愛情物語 TOKYO愛情物語
森 瑶子 (1991/01)
角川書店
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婚約、結婚、浮気を男と女それぞれの場合ごとに書いた短編集。
ちなみに最後の章は「離婚 二人の場合」となっている。
私はこういう対比させたものが大好きだけれど、最後のこの章はさすがだと思う。

全部について感想を書くのもどうかと思うので、良いなーと思った二編について。


最も好きなのは「結婚 女の場合」のラストだ。
今日子は腐れ縁の男友達が惚れた見合い相手に振られてしまって焦って結婚を取り付けるのだけれど、婚約指輪が自分の誕生石じゃなかったり保証書の日付が微妙だったりで直感的に「自分のためのものではない」ことに気付き、こっそりと指輪を交換に行くシーン。
彼を責めることも出来るのに、今日子がそっと交換しにいくその心意気はなるほどと思うが、私はどうも、他人に評価をもらいたいタイプな用で、もし交換したなら言わずにおれないと思う。というかもらった時点で気付いて罵詈雑言を浴びせるかも…女にとって婚約指輪の位置づけは大きいのです。

このオチは、続く「結婚 男の場合」で綺麗におさまるのでそれもまた見事といいたい。しかし収まったとはいえそれが超・ハッピーエンドではなくどこかまだ引っかかるようなそんな終わり方なのも悪くない。
結婚生活はすべてがすべて薔薇色ではないのだし。


二つめ、「浮気 男の場合」。
台詞の多い作品だけれどテンポがいい。「カアイイ」彼女が本当にかわいく見えてくるのが不思議だ。最初はたしかに、カシミアのほうがいいけれども。
しかし「カアイイ」っていうのは外見だけのことに使ってはいるけれどこのカーリーヘアな彼女、最初から凄く素直でヒネてて(多少齟齬があるけれど)「〜って訊いてよ」がカアイイ。
いやたぶん、これは女にしか感じない「カアイイ」なのだと思う。

▽あらすじ
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